連載コラム

最終更新日 2016/09/01

ご家族の細かい要望に応えるために

今回は特養等、施設向けの話です。ご利用者のご家族の施設訪問頻度は千差万別。週一回、月一回の人もいれば、預けた後のことが気になって毎日のように来る方もおられますね。施設としては当然、入所後も関心を持って接してくれるご家族の方がコミュニケーションも取りやすく良いことと思いますが、ご指摘が厳しく辟易してしまうこともあるかと思います。そんな事例をご紹介しましょう。

特養のご利用者に、おやつや水分を適切にあげていなかったことがご家族から指摘されたケース

特別養護老人ホーム「〇〇荘」に入所しているAさん(女性、90歳、要介護度5)。入所前は自宅で息子さん(長男)と二人で暮らしていました。自宅が近所だったこともあり、入所以来息子さんは毎日の様に施設を訪ねてくるようになりました。最初は笑顔でスタッフと挨拶を交わし良好な関係が取れていたのですが、徐々に息子さんからの指摘が厳しくなっていきました。ある日、息子さんはいつもと違い険しい表情で相談員にこう言いました。「母の右腕に、親指で強く押した様な痕があった。虐待ではないですか。徹底的に調査してください。」慌ててAさんの身体を確認したところ、確かに腕の一部が黒ずんだ点状になっていました。相談員としては指摘されるまで全く気付かず、フロアのスタッフにも確認しましたが誰も思い当るところは無いとのことでした。まして職員たちは、この息子さんが普段から指摘が細かいことをよく分かっていたので、むしろAさんに対しては慎重に接しきめ細かに見ていたのでした。「申し訳ないが原因は不明であり、虐待があったかどうかも分からない」と説明したところ、息子さんは爆発して言いました。「そんなはずはない!あんた達はいつもこうだ。不備を指摘してもはぐらかして一向に改善しない。こちらが不信感を持ってしまうのも当たり前でしょう。もういいです。施設で対応できないのであれば行政に通報します。」驚いた相談員は、「至らない点についてはご指摘を頂いた都度改善してきたつもりですが、どのようなことがありましたでしょうか。」と尋ねました。すると息子さんは、普段夕方の時間帯に訪問しても母だけおやつが与えられず忘れられていることが多かったこと、夏場では水分補給も明らかに足りず、部屋も日よけのカーテンを閉めず暑いまま放置されぐったりしていたこともあったこと等を機関銃の様にまくしたてたのでした。

…いかがでしょうか。息子さんのことを、いわゆるクレーマーと感じる方もいるかもしれません。ですがどんなケースでも、クレームの元となる出来事が存在します。最終的には事実がどうであったか記録を確認しなければ検証もできず、対応しようがありません。本件では記録を見直しても、Aさんにきちんと毎日おやつを提供していたかどうか、水分はどの程度摂取されたかといった記載が見当たらず、相談員としては息子さんの主張を全て事実として受け止め謝罪するしかありませんでした。

もしここで、短文や写真をSNSの様にクローズドな関係で随時共有できるコミュニケーション・アプリが施設に導入されていたとしたら、どうでしょうか。全てのご利用者に同じように対応することは難しいかもしれませんが、このケースの様に、実質的に特に細かい配慮と観察が必要なご利用者がいるときは活用できます。例えばおやつを提供するごとに写真を一枚撮り、それをアプリに上げることだけで正確な記録となり、問題が起きても情報を基に検証できます。またご家族の心情として、「少なくともAさんを放置している訳ではないのだ」ということが分かり、息子さんも少しは安心して、これなら任せられると思う様になるかもしれません。

本コラムで何度も述べましたように、これからは現場のご家族に対する「見える化」がますます重要になります。忙しく、日々が目まぐるしく過ぎていく中だからこそ、便利なITツールを上手に取り入れることで作業の無駄を無くしコミュニケーション力を向上させるべきです。そうすることで正確な記録をとることができ、同時にご家族の満足度を高め、他施設にも差をつけることができるでしょう。