連載コラム

最終更新日 2016/07/07

「ちょっと立ち話」にご用心!

在宅介護ではケアマネージャーを中心に様々な職種が連携してサービスを提供しますが、ケアマネ一人で30人前後のご利用者を抱え状況も刻一刻と変化し続けており、担当者間でご利用者の情報を共有しチームで動いていくことは大変です。特に事業所内で急な引継ぎがあった様なときは、時間もなく焦ってしまい、ミスも出やすくなります。最近起きた個人情報漏えい事件をご紹介します。

訪問介護での立ち話による個人情報漏えいケース

80歳女性、要介護度3の利用者Aさん。娘さんのBさんが身元引受人となり、訪問介護事業所を数年間利用してきました。その事業所のサービス担当責任者(サ責)が、この度退職し交代することに。新任のCサ責は、前任者と担当ケアマネージャーとの三名でAさん宅に伺い、ご挨拶と引継ぎも兼ねて今後に向けた会議を開催しました。ところが終了後、Cさんは「失礼します。」と玄関ドアを閉めた後、ドアの正面で立ち話を始めてしまったのです。Aさんの日常生活や、以前ヘルパーが辞めさせられたといったことまであれこれと質問し、前任のサ責やケアマネもこれに応じ、知らないうちに30分も話を続けてしまいました。そして、その一部始終がマンション廊下のカメラに映っていたのです。玄関ドアからも見ていたBさんは、最初は見て見ぬふりをしようと思いましたが三名は全く話を辞める様子もなく、しびれを切らしドアを勢いよく開けました。「あなた達、一体どういうつもりなの!」凍り付くCさん達、ですが時既に遅し…事業所は必死で謝罪しましたが、「お宅の個人情報の教育はどうなっているんですか。母のことをあること無いこと、噂話をして許せない。」と大目玉を受けてしまったのでした。

事業所の管理者が後からCさんに事情を聴いたところ、Cさんは立ち話のとき、Aさんの介助について「入浴介助に2時間もかけていたので、驚いた。冷蔵庫内にストックが多く、壁に貼られたメモも大変多かった。新しい食べ物と古い物の入れ替えがうまくできているのか、またあまりにもたくさん入っているため、使いたいものを探す時間がかかってしまうといいう話を聞いている。工夫して時間短縮できないか」といった話をしていたそうです。人間、多かれ少なかれ「表と裏」「本音と建て前」があり、ご家族同席のときはなかなか話しづらいこともあることでしょう。ご利用者の悪口や愚痴ではなく、純粋に支援目的のもと、事業者間で協議することは何も問題ないのですが、今回Cさんは話をする場所を誤りました。玄関前とはいえ、不特定多数が出入りするマンションの廊下で個人情報を含む話をすることは明らかに違法であり、またプライバシーの侵害の程度がひどければ賠償問題にも発展しかねない事態です。

Cさんは勿論反省しましたが、長年この仕事を続けてきて今回の様なことは初めてだったといいます。その原因を自分なりに分析したところ、「A様の担当を引き継ぐことが急に決まり、申し送りをしっかりしないまま会議に参加することとなった。その後、前任とケアマネージャーから現在のサービス内容やサービス内容の中の課題点などをもっとお聞きし、共有したいという思いからその場で立ち話をしてしまいました。」とのことでした。

時と場所をわきまえる意識を

Cさんなりの事情があった訳ですが、当然言い訳として通るものではありません。ご利用者とその家族は千差万別であり、良いケアを提供しようと思えば知るべきことは尽きませんが、職務熱心なあまり「個人情報を扱っている」という意識が薄れることは禁物です。ただ、とはいえただでさえ忙しく、必要な情報を十分共有できない場合が多いことも事実です。そんなときは、これまでの方法を見直し、直接会って会議をしたり、記録一式をまとめて読むといった従来のやり方だけでなく、日常的に小まめにご家族側と連絡を取り合い、それを複数メンバーで共有することも効果的かもしれません。コミュニケーションアプリをはじめとしたIT技術を使えば、Cc欄にアドレスを追加するだけで多くの人と情報を共有することができます。個人情報の保護を念頭に置きつつ、最大限コミュニケーション・ツールを活用できないか検討し工夫されると良いでしょう。