連載コラム

最終更新日 2016/03/10

介護トラブルの大半はコミュニケーション不足が原因です。

こんにちは、介護弁護士の外岡です。介護・福祉の現場で起きる「介護トラブル」の解決・予防を専門としています。

介護トラブルというと、皆様はどのような場面を想像されるでしょうか。

ご利用者の転倒・骨折等の重い事故から、日常における物損事故やいわゆるクレームまで多種多様なケースがありますが、どんな場合でも、キーワードは「コミュニケーション」。普段からご利用者・ご家族との間で小まめに連携が取れているかが重要です。連携が取れないと、ちょっとしたことでお互いに疑心暗鬼となり、些細な行き違いが大事件へと発展しかねません。

例えば施設全般でみられる典型ケースが、「異変を発見したものの、ご家族へ連絡しそびれ、何時間も経ち容態が急変してから慌てて連絡する」というもの。一つ事例を見てみましょう。

有料老人ホームでの転倒・骨折ケース

職員が夜間、要介護度3(認知症)のご利用者を、トイレ介助中に転ばせてしまった。ご利用者を助け上げたところ、痛がる素振りも見せず、バイタルも安定していた。また夜間だったため、職員は「ご家族に連絡して余計に心配させてもよくない」と思い、そのときは連絡しなかった。 ところが明け方になると、ご利用者の熱が上がりぐったりしたため、看護師にみせたところ救急搬送することとなり、右大腿骨頚部骨折と診断された。ご家族は「どうしてすぐ報告してくれなかったのですか。もっと早く搬送していたらこんなことにはならなかったのに」と激怒された。

ご家族により、日ごろどの程度の怪我や熱で「すぐ連絡をしてほしい」と考えるかは千差万別です。人によっては「些細なことでいちいち連絡してくれなくてもいいよ」と疎んじる方もいることでしょう。ご家族一人ひとりの「人となり」や考え方の傾向、大体の生活リズムを把握していないと、電話一本掛けるのも気が引けてしまうものです。まして本件の様に、夜間ともなれば「こんなことで起こしてしまって、結局大ごとで無ければご迷惑になってしまう…」と余計尻込みしてしまいます。 結論としては、本件の様に後から骨折が判明し、責任を問われることになるよりは「オオカミ少年」になってしまっても、とにかくマメに迅速に連絡を取っておいた方が良いといえます。場合によっては、こちらからすれば「様子見」だった行為が、「施設による事故の隠ぺい」を疑われ、さらには施設内虐待を勘ぐるご家族も出てくるかもしれません。

夜間でも気兼ねなくご家族に連絡・報告する方法?

本件の様に転倒といった分かりやすいケースならまだ電話もしやすいけど、小さな痣や切り傷、微熱等悩ましいときは…?」そんな声が聞こえてきそうですが、現場で発見される異変は多種多様ですから、そこはケースバイケースで判断していくしかないですね。 ただ実は、どんなケースでも気兼ねなくご家族にお伝えする効果的な方法が一つあるのです。それはズバリ「メール」です。携帯のショートメール、ネットのフリーアドレス等最近は様々な方法がありますので、ご家族ごとに慣れたやり方を選択し、例えば入居契約時に「ご利用者のお体に異変があっても、まだ緊急事態とは言えない場合は、夜間等差し支える状況であればメールでご報告させて頂きます。」等とお話しルール化しておくとよいでしょう。しかしメールのデメリットは、アラーム設定でもしない限りスルー(未読)されてしまうことです。

最近では介護向けのコミュニケーションアプリなども出てきました。

持続可能な介護生活には、できるだけ普段からの密なコミュニケーションを取ることが重要です。日常の何でもないことでも写真とテキストで報告し、ご利用者の心身の最新情報を共有する様にしていれば、お互いに安心できますし、やり取りをすればするほど心理的抵抗も減っていき、ご家族のお人柄も分かってきます。

全てのご家族にいきなり完璧な対応をすることは難しいですが、まずは「緊急時の連絡」についてルールを整備するところから始められると良いですね。